interview
No.004
「高知あきんどなび」四回目のインタビューゲストは、仁淀川流域の沢渡地区を守りたいという高い志から沢渡地区へUターンして「ビバ沢渡」を立ち上げられた岸本憲明社長。茶農家をはじめられたきっかけから「沢渡茶」をここまで育てた道のりやこれからの展開をお聞きしました。
No.004 || 話し手 : 岸本憲明さん 「(株)ビバ沢渡」代表取締役
聞き手: 片岡佐代
この風景、自然あっての沢渡茶を
知っていただきたいです。
岸本憲明さん (株)ビバ沢渡 代表取締役
「秋葉祭り」を守りたいなら仁淀川町に産業を生んで、人を定着させ、お茶にもう一回光を当てなければと考えました。
商品は種類も多く色々な味が楽しめます。
「沢渡茶」のはじまり
──沢渡のお茶づくりはいつから始められましたか?
始めてから7年目、仁淀川町に移住してきてからは10年目になります。
──商人塾を受講されたのはいつ頃ですか?
専業になってからの1年目です。 2月に専業農家になったんですが、その年の7月には商人塾の門をたたきました。先生の言っていることも、みんなで休憩のときに話していることも全然分からないし・・・全然分からないことばっかりだったので「すごいなー」と思いながら皆さんとお話できたのが生きた勉強でした。
──どうして沢渡に帰ってこようと思われたんですか?
やはり今後5年10年先を見たときに、帰らないとできないんですね。
人任せじゃなく自分がお茶を育て、生業として成り立つような仕組みをどうやって作ったらいいのかなって思ってました。
県内の茶産地でも付加価値をつけて売るのをみて自分達でも出来る!と感じました。タイミング的に「自分がやらないと」という変な責任感が出てきたのがきっかけです。(笑)
ティーパックを開けたとたん、香ばしいほうじ茶の香りが広がります。
──素晴らしいですね!
情熱というか想いは本当に強いんですよね。
「沢渡茶」の原点
──沢渡のお茶を広げて行きたいという気持ちは、学生の頃からおもちでしたか?
いやいや、結婚して子供ができてから考えました。 田舎で子供が祖父母にかわいがってもらうのを見ると、昔の僕もこんな感じで育ったなと思い、この地域についての思い入れがすごく強くなってきました。 また「秋葉まつり」も大きな要因です。 祭りを守りたいなら仁淀川町に産業を生んで、人を定着させ、お茶にもう一回光を当てなければと考えました。
──奥様は農業について何もご存知なかったんですよね。
ないです。 「あなたがなぜやらないといけないのか」とすごく言われました。
──結局、奥様を説得でき仕事に協力してもらえる体制になったんですよね。
プレッシャーはプレッシャーですね、でも嬉しいですよ。初めたとき「あなたのやりたいことばかりに振り回される身にもなって」って言われました。(笑)
──お茶を始められて、農業や流通などのお知り合いはいらっしゃいましたか。
農業の先生がおじいちゃんを始め地域の方、あとは仁淀川町に茶業試験場というのがあるので、よく話を聞きに行ったりしていました。 流通に関しては全く知り合いはいませんでした……。
──販売は本当に難しいと思いますが、それを展開していくきっかけは?
口コミでした。 最初「農業一本で稼いでみせる!」っていうのが新聞に載ったんですよ。地域の方々がそれを読んでくださって「これは応援しないと」と初年度や2年目は本当にいろんな方が来てくださいました。そこから販売につながっていき、3年目にやっと収支がとんとんになりました。
新しいテイストの和紅茶と沢渡茶の王道緑茶、どちらの味も沢渡の心を感じます。
「ビバ沢渡」の誕生
──3年目の転換のきっかけは?
個人事業主でやっていたのを法人化して3年目に株式会社にしました。 農業法人にするとかいろんな選択肢がありましたが、販売や飲食業なども見据えて株式会社という形態を選びました。 4年目、5年目から販路は結構増えタイミング的にはよかったなと思いました。
──お茶作りの魅力とこだわりを教えてください。
お茶作りの魅力はよくも悪くも管理が統一できないっていうところです、お茶が育つのをサポートしているっていうイメージです。 こだわりはお客様にこの風景を見て感じていただき、沢渡のお茶が他のお茶とは違うという基盤作りにしたいというのが一番のこだわりです。 この風景、自然あっての沢渡茶を知っていただきたいです。
──水やりも自然のままとか聞きましたが……。
人工的に水を散布することもしないし、農薬を極力使わないのはもちろんです。 先人たちの目の付けどころはすごくて、地の利ですね。ほとんど自然のままのお茶作りです。
──地区でお茶を集めるんですか?
一軒ではなく9軒くらいでやってます。自分が作ったお茶を沢渡茶として、それを超える部分は集めて農協へ流通しています。高知のお茶は品質がいいので農協さんからも引き合いがありますが、全体的に量が減ってきているので地域とうまく連携しなければと思っています。
「お茶の加工品」のきっかけ
──お茶の加工品はどういうきっかけで始めたんでしょうか。
この沢渡のお茶畑をこれから維持していくためには何人必要か、人件費はどれくらいかかるか、年商はどれくら必要かと考え、付加価値をつけられる加工品を考えました。
お茶だけで事業を広げていくのは間口が狭いので、スイーツなどに名前を変えまず「沢渡茶」という名前をお客様に知っていただくところから始め、加工品も販売していきたいと思っています。
──加工品は順調ですか?
はい。自分は営業下手なんですが(笑) おかげさまで年々売り上げも上がってきています。
──お茶を始める前と始めた後、ご自分の中で何か変わったことはありますか。
僕は結構緊張するタイプで商人塾の自己紹介のときも話ができませんでした。
でも回数をこなし、背伸びして講演にも行きはじめると営業先や商談会で話したりするのも抵抗がなくなりました。
また地域の目が変わりました。茶農家を始めたときは「自分だけ儲ければいいんだろう」というイメージをもたれていたこともありましたが、事業を進めるうちに「僕たちがやっていることは地域につながっていっている」というサイクルがようやく形になり「ビバ沢渡のおかげ」とみなさんから声がかかり始め、本当に「ビバ沢渡」をやってよかったなと思いました。
茶大福はJALの国内線ファーストクラス機内食にも採用されています。
──その集大成でカフェができる予定があると聞きましたが。
そうです。とりあえず第一ステージ終わりかなと。カフェをきちんとやって定着させ軌道に乗せてから自分たちで加工品を作りたいなと思っています。今は外注ばかりなので、目標は自社での加工です。
──仁淀川町で生まれて、外で出て行った方たちが地元に仕事があると分かればいいですね。
パートでもいいんです。接客業はあまり仁淀川町にないので職種を作るのも高知に帰ってくる人たちのひとつの魅力になればと思います。
──沢渡さんが成功されていくなかで、あとから「僕もこういうことがしたい」という方がいらっしゃると思うんですが、その方たちにアドバイスをいただけますか。
人に会うことかなと思います。
自分がやりたいことはしっかり考えてからやり始めても、結果は反対のことになることもあります。僕もお茶を「沢渡茶」とパッケージさえ作れば売れるものと思っていましたが、やってみたら全然売れなくていろんな人の話を聞きました。
何かを始めるときは本で知識を集めるより人の口から生きた話を聞く方が自分の中に入りやすいと思います。問題は一つの方向ではないのでいろんな方面の方々から話を聞くというのがすごくよかったので、ぜひ試していただきたいです。
──これから加工場を作ることを目標にされているということですが、今度はご自身がアドバイスをもらえるとしたら、どんな方にどんなアドバイスをいただきたいですか。
今やっているこの場所を活かして、地域を巻き込みながら事業を進めていきたいです。
今は知り合いだけで茶摘み体験をしていますが、地域の人も一緒にするにはどうすればいいかなと考えています。
今回は(株)堀・おかざき農園の岡﨑美香さんのご協力を得て岸本さんへのインタビューをお願いし、農家ならではの話題もお聞きすることができました。
ふるさとを心から大切に想い、沢渡の歴史をお茶に託して「ビバ沢渡」を立ち上げた岸本憲明さんです。
若武者を思わせる精悍なまなざしは、破顔一笑で無邪気な愛くるしい明るさに変わります。
ご家族と一緒に沢渡のお茶を護り、広げていく努力は着実に実りつつあります。
ゼロから一歩踏み出した決心はいやはやお見事! ご自身の原点である沢渡地域から高知県全域、いや日本全域から世界まで「沢渡のお茶」を発信し、広げていっていただきたいと心から願います。「心から誇れる高知のお茶」のトップリーダーとして今後もご活躍されることを期待してやみません。
聞き手: 片岡佐代
(株)ビバ沢渡
0889-32-1234
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